古民家再生事例

 厳しいけれど豊かな自然、美しい景観に恵まれた山間の地に、溶け込むように佇む古民家。都会の喧騒を忘れ、そんな古民家でゆったりとした時間をすごしたいと願う方が増えています。地方には土地と建物が正に一体となった住宅がまだまだたくさんあり、古民家暮らしを望む人々に受け継がれるのを待っています。
 長年の風雨に耐えた古民家を前にすると、自ずと傷みの補修や居住性能の向上ばかりに関心は集中しがちです。が、「どう再生するか?」の主眼は、実はそこでの暮らしのイメージにあるのです。求めているのはどんな暮らし方なのか、探している時間はどんなテンポのものなのか。
 再生事例をもとに見ていきましょう。

   
     
 

 
 山梨県と長野県の境、甲斐駒ケ岳の麓に近い白州町の鳥原地区にこの古民家は建っていました。周辺にはサントリーワイナリー・七賢酒造・谷桜酒造などのある、豊かな水資源に恵まれた土地柄です。この古民家を譲り受けたHさんは、敷地の中を水路が流れ、畑・竹やぶと土蔵のある家とめぐりあった時、「ここで農業をしながら暮らせたら」と考えました。畑には猪や鹿も出没し、侵入を防ぐための柵や網が必要なほど自然に密着した地域です。都会で暮らして来たHさんの夢と意気込みを、再生に活かすべく計画の検討が始まりました。

 改修前の古民家の様子。
 
 母屋は数年前に屋根の葺き替えが行われたばかりで建物としては良好な状態でしたが、設備が旧式で使いづらく、寒さ対策のためか新建材で多くの部分が覆われて古民家としての魅力を損なっていました。また、1階のみが生活スペースとして使用され2階はまったく使われていない状態でした。このままでは動線も夢も充分には広がって行きません。
 しかし、建物の規模は延べ面積356m2と大きく、建物全体を改修するには遠大な計画となってしまいます。そこでまずは生活の中心となる場所に工事範囲を絞り、傷みの著しい箇所や創建後に応急的に増築や改修を施した部分は、思いきって撤去することを決めました。こうした過程を経ると、この建物が本来持っていた独自の魅力と向き合うことが可能になり、再生工事に最低限必要なものは何なのかを考えることができます。
↓別ウインドウで拡大間取り図開きます。
 多くの古民家にみられるように、この家も断熱性が低く、また暖かい空気を上部へ逃がさないようにするため新建材などで天井を覆ってありました。

 そこで、断熱効果を高め、さらに採光条件を向上させることで、明るく暖かい家を目指しました。
外壁は現在の民家の外観を残すため、建物の内側を断熱施工。サッシも断熱性の高いものに変更。
 
■古材の魅力をみせた間取りの変化
 民家の長い歴史の中で、傷んだ箇所を新建材で補修してある箇所が目立ちました。本来の古民家の魅力を再現するため新建材の内装を撤去しました。また部屋を小割にしていた壁や不要な設備は撤去し、空間を広く利用しました。
改修前の玄関
改修前の囲炉裏部屋
改修後の玄関(土間)。新建材で覆われた天井を取り去り、玄関の土間空間を吹抜に。古民家の梁組みの魅力が復活した。さらに、土間を挟んで反対側には用途を限定していない板の間を設け、新潟から取り寄せた古建具も組み込み、雰囲気作りを行った。

土間の反対側。かつて洗面脱衣室・浴室などの水廻りと通用口があった場所。正面の障子は既存の障子を幅詰めして再使用している。板の間には撤去した蔵の栗の柱を転用。腰壁に板を張り、落ち着いた雰囲気に仕上げた。

改修後の囲炉裏部屋から台所越しに和室を見る。
 

長い間使われていなかった2階の一部を寝室に改造。吹抜に面して窓を設け、階下とのつながりをもたせた。

うねる梁とボールト状にカーブした天井が柔らかい空間を創っている。

土間吹抜に、窓の開閉や掃除のために設けたキャットウォーク。吹抜空間の醍醐味が一番感じられるところ。

 

■粋なアクセントをつける

 古い材料を活かしつつ、細部の施工に現代的な感覚を取り入れることで、粋な空間や小道具が生まれました。

土間用珪藻土にモザイクタイルを埋め込むとこんな模様に。

 

敷地内にあった四判石を、生えていた苔もそのままに靴脱ぎ石に転用。実際に据えるには高さ調整、水平調整など施工者の苦労が。

2階寝室に上がるために設けた階段。手すりの磨き丸太に施工者の心意気がこめられている。

養蚕用の出入り口はそのまま活かし、ふとんや洗濯物干し用に手すりを設けた。新材を古材と合うよう着色。無垢材の保護にもなる色付きの自然塗料を塗った。

窓は既存の建具と格子を再使用。鉄の格子は錆を落として塗り替えている。玄関の天井をはがして吹き抜けにした際に解体した板を、玄関の腰板として使っている。色の違っているところが、天井根太と板が以前触れていたところ。
 

■快適生活の必需品・水周りの新設

 浴室は土間の横にあったので半分外のような感覚で使いづらく、またトイレ・洗面所も含め設備は古いものでした。そこで位置を変え設備も新設しました。
 

土間東側にあった既存浴室・納戸は撤去。北側に張り出していた既存トイレも撤去。代わりに北側の広縁を改造し、3つの設備をまとめ新設した。
 

 一般に、古民家暮らしを望む方は古民家に対する具体的なイメージをあらかじめ抱いていることが多いようです。情報を集め、さまざまな再生事例を見聞きする内にイメージを膨らませること自体はよいのですが、あまり決めつけ過ぎると「イメージ通りの物件が見つからなくて」と目移りするだけで終わってしまいかねません。イメージは建物の規模や外見、間取りについて固めるのではなく、最初に述べたように「暮らしのイメージ」としてしっかり固めるのが成功の秘訣といえます。
                   
 建築主が暮らしのイメージをしっかり持っていると、設計者はそれを汲み取って専門家の目から最良な提案を行います。それはこの事例のように的を絞った工事計画であったり、不要箇所の大胆な撤去、あるいは新しい素材の組み入れや新たな空間の創出など、建築主の希望とその建物独自の魅力を活かした再生設計として形になります。
                   
 建築主が古民家暮らしに求めているものは何なのか? 設計者はひとつの答えとして土間の天井を取って吹き抜けにしてしまいました。すると、そこには一見「何もできない空間」が創り出されます。が、上がり框に腰掛けてこの空間に包まれる時、「探していたのはこんな時間だったのだ」と、きっと人は思うのです。誰もが忘れかけ、誰もが求めているもの、そんな安らぎの空間は実はどんな古民家の中にでも創り出すことができる、と私たちは考えています。

 
 

 記事協力
 一級建築士事務所(有)アルケドアティス (代表:網野隆明)
住所:山梨県甲州市塩山下於曽556-1
電話:0553-33-7739
http://www.alcedo-atthis.com
       


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